「WARREN MAGAZINE」とは ウォーレン社(Warren Publishing)が、1950年代から1980年代にかけて出版刊行していた雑誌数種を統合する呼び名です。特に本サイトで紹介している「CREEPY」「EERIE」「VAMPIRELLA」の三誌は、いずれも長期に渡り人気を保っていた刊行物で、WARREN MAGAZINEとは、この三誌をまとめて指すと言ってもいいでしょう。

1958年 ジェイムズ・ウォーレンという一人の青年が「FAMOUS MONSTERS FILM LAND」という同人誌並みの薄い怪奇映画専門誌を初めて世に出した年です。この頃、米国の家庭ではTVに1930年代から1940年代のモノクロの怪奇映画、SF映画が頻繁に放映され、その人気に乗じた形で、「FAMOUS MONSTERS FILM LAND」は徐々に売れ行きを伸ばし、ウォーレン社は出版社としての基礎を徐々に固めていきました。

1964年 この年、ウォーレンが創刊した雑誌は「MAD」の成功に触発された、怪奇ホラーコミックスマガジン「CREEPY」で、これは当時の米国コミック倫理コードシール(青少年に害を及ぼすと見なされる表現を排除するために50年代に制定されたが、既に形骸化しつつあった)無しの出版を刊行し、アダルト・ホラー・コミックスという分野での成功を手にします。「CREEPY」は季刊誌として出発しながら、多くのファンの声に応えて後に月刊化にシフトし、コミック冒頭の案内役として登場したアンクル・クリィーピィも、初期から何回か描き直され、「CREEPY」のマガジンキャラクターとして米国中に知れ渡っていったのです。

1965年 翌年、「CREEPY」の兄弟誌「EERIE」と、戦争コミック雑誌「BLAZING COMBAT」を発刊。後者はすぐに廃刊になるも、「EERIE」「CREEPY」と並び順調にそのファン層を拡大していきました(兄弟誌と表現しましたが、「EERIE」のキャラクターは、従兄弟のイーリー、つまり、アンクル・クリィーピィの叔父さんに対して従兄弟という位置付けです、内容的には「CREEPY」よりも幻想色を強め、剣と魔法の物語に重きを置いています)。

1968年 この年、その後圧倒的人気を得る事となる「VAMPIRELLA」が フランク・フラゼッタのカバーで創刊( このキャラクターは「FAMOUS MONSTERS OF FILMLAND」の編集者であつた フォーレスト・J・アッカーマンによって作られ、ジョー・ゴンザレス の絵により決定的なものとなりました)。WARREN の有名な三大コミック誌がここに揃い、またその後にも、ウィル・アイスナーの名作「SPIRIT」を復刻刊行。WARREN誌はこの後、10年以上に渡って、アダルト・ホラー・コミックスという分野での人気を不動のものとします。

ウォーレン誌のカバーアート が当時のコミック誌のカバーとは異なり、WARREN誌の人気の一因ともなっていたのは、実力有るアーティストによる美しいペインティングに有りました。フランク・フラゼッタ、ケン・ケリー、サンジュリアン、エンリク、等のカバーペインティングは、独立したアートワークとして注目を集め、数年後、コンピュータ・ロールプレイング・ゲーム等の商品カバーイラストに多大の影響を与え、我が国でも模倣作が数多く出現しました。カバーだけではなく、その内容も、リッチ・コーベン、ジョー・ゴンザレス、アレックス・ニーニョ、等のアーティストの絵の素晴らしさは特出し、さらにアメコミの帝王ニール・アダムス、バニー・ライトスン迄コミック作品を描いていました。この頃の彼等の作品に影響を受けた日本のコミック作家も多数存在します。

1978年 イラストレイテッド・アダルトファンタジィ「1984」誌を創刊。

1979年 オールニュー・イラストレイテッド・アドベンチャー「ルーク」誌を創刊。この年日本版「VAMPIRELLA」が創刊されるも、2号で廃刊。フランスの「メタル・ユウラント」を基にした「ヘヴイ・メタル」がナショナル・ランプーン社より刊行されたのもこの年です。

1980年 コミックの老舗マーベルも「エピック」を、フラゼッタのカバーで鳴り物入りで創刊。79,80年と二大強敵誌が誕生し、ウォーレンの牙城は徐々に浸食され始めます。
実は既に80年代に入る以前から、ウォーレン誌のカバーは変わり始めていました。過去のカバーの使い廻しが多発し、その後、カバーがデッサン力の欠如したアーティストに交代したり、「VAMPIRELLA」のカバーがモデルによる写真になったり、またその内容も、原稿料の安いスペイン系B級アーティストになり、かってのウォーレン誌の魅力を失っていったのです。実力派アーティストがカバーを描かなくなって、ファン達が離れ始め、ウォーレン誌の最大の魅力は、そのカバー・アートに有った事が図らずも証明されてしまった訳です。

1983年 ウォーレン社、経営悪化により出版中止倒産。「FAMOUS MONSTERS FILM LAND」はダイナコム出版社に、「CREEPY」「EERIE」「VAMPIRELLA」はHarris Publications社にその版権が移りました。

これから ウォーレンの出版物を手に入れる事は、現況では困難でしょう、一部コミック・ショップ等で古書として極く僅か販売される事はあっても(「VAMPIRELLA」の稀少ナンバーは現在200ドル以上したりします)現存するWARREN MAGAZINEは各国のコレクターの手に温存されています。